医学誌 Cureus に、過去15年の NBA 選手のアキレス腱断裂を分析した研究が載った。直近のシーズンには断裂が7件あったという。断裂した19人のうち復帰できなかったのは1人だった。
研究は、アキレス腱断裂が NBA 選手の効率や出場能力に与える影響を調べたもの。過去のデータを後から集めて分析する観察研究で、対象は手術が必要な完全断裂に限られる。断裂後に休む期間は平均9.25か月で、2021年の系統的レビューが報告した平均11か月より短かった。従来のデータでは、断裂した選手の約3分の1が復帰しないか先発10試合未満にとどまり、早期引退につながったとされる。1970年から2018年の引退率は21%と報告されている。今回の研究では19人中1人だけが復帰できなかった。筆者は、この改善は手術の技術、スポーツ医学、リハビリの進歩によるところが大きいとみている。
復帰した選手の成績には低下が見られた。1試合あたりの出場時間 (MPG) は平均6.4分、選手の総合的な効率を示す指標 PER は平均3.5下がった。断裂した選手の平均年齢は過去15年で27.9歳 (±4.0)、直近のシーズンは26.4歳だった。筆者は、症例が少なく統計的な有意差は言えないとしたうえで、若い年齢で断裂する傾向を示す可能性があると述べている。従来の研究ではシーズン終盤のベテランに多いとされていたが、近年は若手も終盤やポストシーズンに同じように負傷しているという。
筆者は、観察研究のため因果関係は結論づけられないとしたうえで、要因の候補を挙げた。アマチュアの育成組織 AAU から高校、大学、NBA の82試合へと続く長年の負荷の蓄積、ポストシーズンを深く勝ち上がった後の短い回復期間、オフシーズンの高強度のトレーニングなどだ。速く動き、素早く方向転換し、高く跳ぶための鍛錬で脚の筋肉が生む力が増え、腱への負担が大きくなるとも書いている。限界として、症例の少なさや、2シーズン以内に復帰しなかった選手を除外したことによる、低下の過小評価の可能性を挙げている。
筆者は、症例が少なく観察研究であることから、断裂の増加や若年化の原因を断定できないとしている。
用語・人名メモ
- アキレス腱断裂 — ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ腱が切れる怪我で、この研究は手術が必要な完全断裂だけを対象にしている。
- PER — 選手の1分あたりの貢献を1つの数字にまとめた効率指標で、この研究では断裂前後の比較に使われている。
- MPG — 1試合あたりの平均出場時間 (分) のことで、この研究では断裂後に平均6.4分減ったとされる。
- AAU — アメリカのアマチュアバスケットボールの育成組織で、筆者は多くの選手がここから年間を通じて競技を始めると説明している。
出典: Cureus